中古マンションを買うまで① マンションを見つける
マンションを買う。
そんなこと、まったく考えたことはなかった。
小さい頃から無類の間取りマニアで、物件広告を見つけては見入り、パソコンソフトで家を設計し、インテリア雑誌や建築雑誌を読み漁った。
ミッドセンチュリーモダンからレトロモダン、北欧。夢と妄想は止まらなかった。
それでも一人暮らしのままで時は過ぎ、物件への思いは消えつつあった。
何より、今住んでいるダイワハウスの賃貸が快適すぎた。
北欧調の床におしゃれなアクセントクロス。広い洗面台に、そこらの建売より立派なお風呂。職場から家賃補助が出ていることもあり、まだまだここに住む気だった。
だけど、住んでいる町はお世辞にも暮らしやすいとは言えなかった。
周囲には何もなかった。車社会だから、コンビニやスーパーがないのは我慢できる。それに、車を走らせてすぐに幹線道路があって、たくさんの大型店が並んでいた。ディスカウントストアからファストファッション、ファミリーレストランとなんでもあった。
でも、それだけだ。
退屈な町だった。大好きなウォーキングも、この町は何も楽しくなかった。
いつも同じ風景が続き、違う風景の道に出会うと、じろじろ見られることもあった。
住めば住むほど、この町が好きになれない気持ちが大きくなった。
だけど、引っ越す気はさらさらなかった。
ある休日、いつものように惰性でネットで間取りを見ていたところ、電気が走った。
街でいちばん大きな図書館に歩いて行けて、一級河川のすぐ近くのマンションが売りに出されていた。
近くにはお気に入りのベトナム料理のレストランがあり、大きな公園もあった。
しかも、新幹線が走る駅まで徒歩圏内である。
その物件が、66㎡で1300万円。
居ても立っても居られず、その場でメールを送った。
〈続く〉