巣をつくる

ひとりぐらし 中古マンション リノベ日記

中古マンションを買うまで④ リノベーション会社を探す

インテリアが好きだ。

とんでもなく好きだ。

5歳のころに、近所で家を建てていた。なぜだかわからないが、わくわくした。職人さんがオレンジ色の瓦を屋根に敷き詰める。それを飽きずにずっと眺めていた。

それ以来、家とか建築とか設備とかそういうものが大好きで、これまで千を超える回数、憧れの家をシミュレーションしてきた。

 

いよいよ本当に自分の家を作る(リノベだが)。

 

そこに問題が起こった。

 

田舎にはおしゃれなリノベーション会社がないのだ。

 

全国展開している某リノベーション会社の支店もあるのだが、ショールームのホームページを見てみると、定番のブルックリンタイルにカリモクのソファ、カウンターキッチンに無垢の床、極めつけはむき出し天井にむき出しダクトとおしゃれ感満載で、とっても統一感がない。言うなれば、全部主役。「オレが、オレが」状態である。

 

こんな部屋には住みたくない。(それに広告費にすごくお金をかけている会社は使いたくない)

 

一回目で書いたように、私もこれまでいろんなインテリアが好きになった。好みはコロコロ変わり、小さい頃から今の今まで好きなものはない。飽きるのだ。

 

それを経てわかった。

 

インテリアは引き算である。

 

シンプルこそ、美しい。

 

過剰なリフォームが並ぶ地元の会社を見ながら、「どうしようかなあ」と悩んでいたところ、またしても運命の出会いが。

 

まさに、引き算の美しさが凝縮された建築会社が地元にあったのだ。

中古マンションを買うまで③ 本当に買うのか悩む

マンションを買うと決めたはいいが、やるべきことが山ほどある。

 

まずは自分の人生についてケリをつけること。

そもそもこの年まで家を持たなかったわけではなく、実は20代で一度マンションを買ったことがある。

まだ都会に住んでいたときのことだ。ここに一生住むと決めて買ったはいいものの、やむを得ない事情からUターンを決意し、地元に戻ってきた。いっしょに住む予定だった人には本当に申し訳ないことをした。そのあとも何人かの人と縁があったが、ひとりでマンションを買うとなると、一生一人で生きていく決意をしなくてはならない。

何を思い立ったか、大学時代に初めて付き合った人(海外在住)に連絡した。ちなみに、彼はバツ2である。

「買えば?人生は思ったようにいかないから、今やりたいことをやりなよ」

その発言に勇気をもらい、購入へと一歩前進した。

 

次は実家である。

あっけないほどすぐに賛成してくれた。

ちなみに、「援助は受けません」と言いたかったのだが、いくらか生前援助をしてくれるとのこと。

すぐ帰れる距離だから、将来介護をすることになっても飛んでいけるし、実家は難なくクリアできた。

 

問題は、まだ、リノベーション会社が決まっていなかったことだ。

 

続く

中古マンションを買うまで② マンションを見に行く

※中古マンション購入までの道のりです。あまり役には立ちません。

 

前回まで

ある日、物件情報サイトで好立地に驚くくらいの値段の中古マンションを見つけて、マンションを購入する予定もなかったのに、その場で業者に連絡していた。

 

ここから

ひとめぼれした中古マンションの仲介業者に急いでメールをして一週間後、マンションを見に行った。

門の前には仲介業者の方が待ってくださっていた。

すらっとした、都会のにおいのする方だった。

はたして、私はいい歳して軽装にリュックという恰好。

少し恥ずかしかった。

 

マンションに入ってみると、中古30年だと思わないほどきれいだ。管理の良さは一目瞭然。さすが全国ディベロッパーのマンションだ。感動しながら部屋に向かった。

 

しかし、中に入ると、築年数の経過は隠せなかった。一度張り替えたらしいフローリングもきれいではなく、水回りも古かった。タイル張りのバスルームは、サイトで見たときは少しレトロな感じがして「そのままでもいいかな」と思っていたけれど、実際に見るとレトロでもなんでもない、ただのタイルだった。

 

明らかに今住んでいる賃貸物件の方がいい。

 

期待していた眺望もそんなでもない。

 

ただ、最初からフルリノベーションする気だったので、内装は見ても仕方ない気がした。変に統一感のないリノベをされるより、ずっといい。

 

それにしてもやはりこの値段で、角部屋、バルコニーは二つ、すべての部屋に窓(一つは出窓)は考えられなかった。

「なぜ、こんなに安いのか」と聞いても、「そんなに安いわけではない」との答え。

「本当にそうなのか」と考えるが、それよりも頭の中のローン計算が止まらない。

 

それにしても、この業者さんはどこかで見たことがある。

 

見学後、名刺交換をして学生時代の同級生だったことがわかる。

私の母校はOB同士の結びつきがすごく強い。

東京から10年前にUターンしてきた私も「お世話になるなら母校系列」が染みついていた。

 

「いや、もう、ここ買うしかないのでは」

 

運命かもしれないと思い始めた。

それにしても想定以上に安い運命である。

 

〈続く〉

 

中古マンションを買うまで① マンションを見つける

マンションを買う。

 

そんなこと、まったく考えたことはなかった。

 

小さい頃から無類の間取りマニアで、物件広告を見つけては見入り、パソコンソフトで家を設計し、インテリア雑誌や建築雑誌を読み漁った。

ミッドセンチュリーモダンからレトロモダン、北欧。夢と妄想は止まらなかった。

 

それでも一人暮らしのままで時は過ぎ、物件への思いは消えつつあった。

 

何より、今住んでいるダイワハウスの賃貸が快適すぎた。

 

北欧調の床におしゃれなアクセントクロス。広い洗面台に、そこらの建売より立派なお風呂。職場から家賃補助が出ていることもあり、まだまだここに住む気だった。

 

だけど、住んでいる町はお世辞にも暮らしやすいとは言えなかった。

 

周囲には何もなかった。車社会だから、コンビニやスーパーがないのは我慢できる。それに、車を走らせてすぐに幹線道路があって、たくさんの大型店が並んでいた。ディスカウントストアからファストファッションファミリーレストランとなんでもあった。

 

でも、それだけだ。

 

退屈な町だった。大好きなウォーキングも、この町は何も楽しくなかった。

いつも同じ風景が続き、違う風景の道に出会うと、じろじろ見られることもあった。

住めば住むほど、この町が好きになれない気持ちが大きくなった。

 

だけど、引っ越す気はさらさらなかった。

 

ある休日、いつものように惰性でネットで間取りを見ていたところ、電気が走った。

 

街でいちばん大きな図書館に歩いて行けて、一級河川のすぐ近くのマンションが売りに出されていた。

近くにはお気に入りのベトナム料理のレストランがあり、大きな公園もあった。

しかも、新幹線が走る駅まで徒歩圏内である。

 

その物件が、66㎡で1300万円。

 

居ても立っても居られず、その場でメールを送った。

 

〈続く〉